金融・人材領域でトップの座を勝ち取り、追われる存在に。トップシェア獲得の苦悩と新領域の開拓
30人弱のメンバーをまとめ、新領域の開拓、クライアントとのやり取り、既存事業の勝ち筋を示しメンバーを育成するなど、広告事業部・事業部長として奔走する井上さん。キュービックの柱となる金融や人材領域のメディアでは、事実上トップシェアとなりました。前職の楽天からキュービックに転職することになったきっかけ、今のお仕事、将来どんなメンバーとともに働きたいかなどを伺いました。
マーケティングによって事業が成長していく過程を隣で見ることができた体験
新卒で入社した楽天では、金融部門で1年ほど研修を受けたあと、楽天証券に配属となりました。証券の知識を身につけるために口座開設のオペレーションなどカスタマーサービス系のオペレーターを1年くらい、こなし、投資信託のマーケティングを担当しました。
もともと私がマーケターに興味を持ったのは、入社前に遡ります。内定をもらったあとに10カ月ほどインターンの期間があり、楽天のとある部署で働くことになったんです。
その部署は当時、新規のサービスを立ち上げたばかりでしたが、マーケティングに長けた社員の活躍で、1日1万円程度だった決済金額が1ヶ月1億円にまで伸びたんです。マーケティングによって事業が成長していく過程を隣で見ることができて、しかもほんの一部だけでも自分自身が関わることができて。あの貴重な経験が今につながる原体験だったんだろうなと思います。
しかし配属されたのはあまりマーケティングと関連のない、楽天証券。
もちろんそこでも学ぶことはたくさんありましたが、入社から数年経ってこのまま楽天証券でキャリアを積んでいくのか、それとも自分のなりたいマーケター像を追いかけるのか、悩んで転職活動を始めました。
そしてキュービックの選考の中で、代表の世一と話をした時にそのおおらかさに惹かれて。これから仕事で何か辛いことがあっても、世一には頼ることができる、拠り所にできる存在だなと思ったんです。ほとんどフィーリングではありましたが、これがキュービックに入社を決めたきっかけといえます。
入社と同時にマーケティングディレクターに
キュービックに入社して、最初は薬剤師転職のメディアに携わりました。広告のチームでMD(マーケティングディレクター、メディアの戦略設計や運営を担当)を務めました。チームには他に社員もいたのですが、私以外は「総合転職」という別の転職メディアの担当に移ってしまい、薬剤師転職メディアには社員は私1人だけが残りました。しかし業績はひどいものでしたね。配属から半年くらいで薬剤師のジャンルからは撤退したほうがいいんじゃないかという話が持ち上がったくらいです。
その苦戦の要因というのが、私自身がチームメンバーの打った施策の振り返りができていない状況でした。自分たちが打った施策が業績に大打撃を与えてしまっていることに気がつくのも数カ月後、という始末で。SNS広告でターゲティング規制がかかって、「薬剤師」という特定の職種名で広告を打つことができなくなり、その対応が遅れたという要因も重なっていました。
狙いを持って施策を打って、検証して、次につなげる
このままではまずいと危機感を持ち、自身のスキルアップに加えて仮説検証をしっかり回す。しっかりと狙いを持って施策を打って、検証して、次につなげる。こういうことが普通にできるような組織に変えていったんです。そうしたらうまく回るようになり、結果的に薬剤師転職の広告メディアは継続することが決まりました。
薬剤師転職での成果もあって、総合転職のメディアもジュニアマネージャーとして任されるようになりました。
しかしこの辺りで……コロナが始まるんです。
コロナ禍で迎えた「人材ジャンル厳しいんじゃない?」の逆風に相反するはずの量と質、両方コミットで立ち向かった
コロナ禍を迎え、人々はわざわざこの時期に転職をしなくなりましたし、求人自体も減りました。誰しも、世の中がどう移り変わっていくかわからない状況では、今いる会社にとどまろうとするもの。転職を考える人が減れば、自然と事業としても厳しい状態に陥り一時期はステイとなりました。
しかし、改めて落ち着いて求人の動向を調べてみると、コロナ禍においても転職できる人はいたんです。それがハイキャリアとエンジニア。この2つを押さえるための戦略にシフトをしたら、総合転職の業績がめちゃくちゃ伸びまして。結果的に売上が3倍以上になりました。クライアントから予算を獲得する際に、マーケットを先読みし、確からしい予測をたて質をコントロールすることに重きをおいたことが勝因といえます。
第三者視点でプロダクトやサービスを紹介できること・成果報酬であることの意義
これだけ情報が溢れているなかで、ユーザーが本当に欲しい情報に辿り着くことは年々ハードルが上がっていると感じます。それなりの情報処理能力や検索力・判断力が求められるためです。そんななかで我々が、第三者視点に立ち、ユーザーとクライアントそれぞれに向き合い、本当に価値を感じられる者同士を情報によって繋げる。以前はその立場は圧倒的に紙媒体である雑誌でしたが、今やデジタルメディアがメインとなりつつあります。比較メディア事業がもっと評価されて良い時代に突入したと思っています。広告メディア・SEOメディアをユーザーにとってもっと身近に、より価値のあるものに押し上げたいと考えています。
例えば、今、転職領域で私たちが運営しているメディアは、文字通り「転職」するときしかユーザーは訪れません。しかし、「転職」というイベントは、キャリアという概念で考えたとき、長い時間軸のわずか1点にすぎないのです。私たちが運用するコンバーション(CV)メディア事業は、その瞬間の選択には携わってはいますがまだまだできることは多いと考えます。
掴んだトップの座、さらなる成長のためヘルスケア領域への参戦
これまでは人材・金融ともにそのジャンルでクライアントの予算シェアトップを獲得することを目指してひた走ってきました。しかし、今、念願叶ってトップシェアを獲得できたものの、”追われる存在の難しさ”を痛感しています。これまでは毎年2、3倍の成長をしてきました。しかし、獲得できるパイが落ち着くと、ここからさらなる右肩上がりの成長をするためには次なる成長のために新領域の開拓が必要不可欠となります。
今年2月から新たに「ヘルスケア」領域の開拓を始めました。「ヘルスケア」はデジタルマーケと相性がよく、新たな領域へ踏み出すのに最適です。今まさに、新たなメディアを作っている最中で、2024年3月から広告出稿を予定しています。
私が今、こうしてヘルスケア領域の開拓をしているのも、経営陣の承認を細かくとる必要がありません。新しいメディアの立ち上げなどはほとんど現場の判断に任せられており、自分が考えたことを壁を感じることなく試せる環境があります。挑戦にNOという人はほぼおらず、自分たちのメディアを運営しているため、広告主の意向を確認する必要もない。ある程度自分でスキルを積んだ人ならば最高の環境です。
他社のマーケティングの部署の話を聞くと、コンサルの人が突然現れて戦略が落とし込まれたり、失敗を許容してくれる文化が醸成されていなかったり…何かをやるのに承認が多いとそれだけで現場は疲弊してしまいます。そのような環境ではなかなか個人の成長スピードも遅くなります。自分で考えたことを試行錯誤して進める事こそが、成長につながる。だからこそ、私が事業部長になってから階層は少ないほうがいい、と考え、現場社員にはマネージャーと同等の裁量権を渡すようにしています。クライアントからの予算をどのように配分するか、また施策の意思決定、戦略の提案などひとまず自分で考えてやり切ることが大事だと考えています。
反対に自分で考えられる方、好きにしていいよと上から言われて自ら動ける人間でないと厳しい環境でしょう。
比較メディア事業において、キュービックはトップ企業であるといえます。しかし、私たちは現状に満足していません。競合をこれまでの比較メディア事業者ではなく、企業と個人のマッチング企業とした場合、キュービックは挑戦者です。
これから、キュービックは比較メディアをより進化させ、単なるユーザーが必要な時だけ見る比較サイトという位置付けではなく、ユーザーを継続して後押しできるような、ユーザーに覚えてもらえるようなメディアへと成長させていきます。その際にやはり大事になるのが定性情報と定量情報を結びつけて一人ひとりのユーザーインサイトに向き合うこと。
「ユーザーと向き合う」「ユーザーのインサイトを掴んで前進させる」これらを武器に挑んでいける人とともに働きたいと考えています。
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井上真琳
2014年に新卒で楽天株式会社に入社。楽天スマートペイ(現:楽天ペイ)や楽天カード、楽天証券など複数の金融商材を扱う仕事に従事。2017年にキュービック入社。薬剤師転職メディアのマーケティングディレクター・総合転職チームのマネージャーを経て、2022年7月に広告事業部事業部長に就任。
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