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海外事業をやりたくて仕方なかった24歳がインドネシアで奮闘4年、がっつり赤字作って戻ってきちゃった話

こんにちは。白土航太(しらど・こうた)です。株式会社キュービックの福岡支社で広告代理店事業の推進チームに所属しています。

実は2015年頃にアジア戦略室として生活の拠点をインドネシアへ移し、2016年キュービック初の海外拠点となるシンガポール法人CUEBiC SINGAPORE Pte. Ltd.を設立、2017年にはインドネシア法人PT.CUEBiC DIGITAL INDONESIAを設立しました。

10種以上の事業へ挑戦しますが、失敗を重ね、2021年には海外法人を一時閉鎖し、日本へ戻っています。

この記事ではタイトルにある通り、私がまず何者なのかも含め、キュービックで初となるアジア戦略において大きな挑戦をし、いかにして失敗したか赤裸々に語りつつ、キュービックという会社がどれだけ失敗を許容してくれる土壌が備わっているか、この記事を読んでくれた人に伝われば幸いです。


インドネシア支社の前身…?!新規事業開発室の立ち上げ

私、白土は2011年にインターンとしてキュービックに入社しました。大学の同級生から「知り合いの社長がアルバイト募集してるから行ってみたら?」という怪しい誘いに乗ったのがきっかけです。その友人は代表・世一英仁(よいち・ひでひと)の塾で講師をしていた時代に授業を受けていた生徒でした。しばらく経ってから友人にどういうつもりで紹介したのか聞いてみたら僕の素行が悪く、社長に更生してもらおうと思って紹介したみたいです。自堕落な学生生活を送っていたので、今となってはその友人に感謝しなくてはですね。

もともと僕自身、海外で働きたいという想いが強く、発展途上国における社会課題をテクノロジーで解決できないものかと考えていました。日本の技術力は非常に高いですが、なかなかサービスに展開できていないことが課題でした。

そんな話を世一には話していたので、当時発行した会社のパンフレットではインターン生としてインタビューに応じ、新卒ではこの会社に入るつもりはないけれど…なんて話をしていたぐらいなんです。。今思えば、よく掲載してもらえましたよね…笑

しかし、学生インターンでありながらメディア事業本部に所属し、当時の売上のかなりの割合を僕が運用していたので、実際に就活の時期になると、今の仕事を投げ出して急に辞めることを考えられず、この会社にいる人たちと働く道を選んでも後悔はないなと思い、結局そのままキュービックに入社しました。その後、しばらくは金融領域のメディアの広告運用を担当していました。

最近、キュービックではアンパサンド株式会社という子会社を立ち上げて、新規事業開発を行っていますが、実は上野にオフィスがあった2016年頃にも一度、”新規事業開発室”を立ち上げたことがあります。メンバーは、当時、上長となる取締役と私と学生インターンの3人でした。

倉庫を新規事業開発室として使い、人材ジャンルのマッチングサービスなど新たな事業の構想を練っていました。結局、その取締役がキュービックを去ることになり、3ヶ月ほどで”新規事業開発室”の船出は形にならないまま終わってしまいました。

プロジェクトが頓挫し、残ったのは社員の私と学生インターンのみ。新規事業開発室の前は、金融ジャンルのメディアのマネージャーをしていたのですが、新規事業開発室を始めるに当たって、すでに別の人間にマネージャーの業務を引き継いでいました。さて…どうしたものか、今更元いたチームに戻るのもなと考えあぐねていたところで、ふと自分はもともと海外で挑戦をしたかったことを思い出しました。

世一との食事で「これから何やりたい?」と聞かれたときに「海外に行きたい」と無謀なことを言い出していた自分がいました。

僕は発展途上国で事業を生み出したいという想いを捨てきれず、東南アジアやベトナム、タイなどに代表の世一とともに視察に行っていました。

2014年、私たちはインドネシア市場の可能性を探るため、未知への挑戦を始めました。私の航空券は片道切符。帰国日未定、行き先の道筋も定まらない。そんな状況の中、インドネシアでの挑戦がスタートしたのです。


片道切符を握り締め、手探りの3週間

最初の2泊3日の視察後、私はインドネシアにそのまま残ることになりました。現地での3週間の滞在を経て、視察の目的は明確化していきました。現地法人を立ち上げた日本人や、IT業界、Eコマース分野で活躍する方々、現地のベンチャーに積極的に出資しているVCの方などに話を伺い、インドネシア市場の可能性をリサーチしました。

当時、中国市場が成熟しつつある中、「次の成長市場はどこか?」という問いに対して、「インドネシアが第二のフロンティアになるのではないか」との仮説が浮上しました。この国ではまだスマートフォンが普及し始めたばかりで、検索エンジン文化が根付いていない一方、SNSが日常の中心にありました。

当時のインドネシアは、日常でインターネットに触れている方が非常に少なく、スマートフォンも出始めのタイミングでした。インドネシアはPCの普及率が低く、スマートフォンを所持したタイミングで初めてインターネットというものに触れる、という方が多いのも特徴的でした。

3週間の現地視察を終えて、人口、GDP成長率、年齢、スマートフォン普及率など、インドネシアの国としての定量的な可能性と人伝いに聞く定性的なポテンシャル(Next中国と言われていた)と肌で感じた途上国独特のカオスさに期待とワクワクを感じずにはいられなかった私は、今度は本格的に向こうで生活しながら、現地生活のなかで事業の種を探すことにしました。

よく代表の世一が許してくれたな、と思いますね。とにかくなんでもいいから、何かしらきっかけを掴んでこい、という形で送り出してくれました。


24歳、現地生活のリアル、3万円の”監獄アパート”からのスタート

現地での生活は想像以上に厳しいものでした。

海外で事業を始めたいのは完全なる僕の意思。
まだ何も売上を計上していませんし、会社に貢献していないので、当然これまで通りの給料というわけにはいきません。世一には「インドネシアの物価だったら最低限、1ヶ月これくらいで生活できます」というのを報告し、生活費としてこれまでの給料の3分の1ほどを貰っていました。

月3万円のアパートは4畳一間、狭めのユニットバスはシャワーの真下に便器があり、シャワーを浴びたあとはしばらくお手洗いにいけません。共同キッチンは雨漏りでびしょ濡れ。
窓も独房のような小窓しかなかったので、遊びにきたキュービックの同僚にまさに「監獄みたいだね」と言われるほどの環境でした。

しかし、これが現地のリアルな生活水準であり、そこでの経験が私たちの感覚をインドネシア市場に合わせる第一歩となりました。今思えば、当時24歳だからこそ、乗り越えられた体験だったかもしれません。

現地採用をし、いよいよ法人スタート!得意のメディア事業を展開したものの…

まずは、初の海外拠点となるシンガポール法人CUEBiC SINGAPORE Pte. Ltd.をキュービックの子会社として立ち上げ、翌年にシンガポール法人の子会社としてインドネシア法人PT.CUEBiC DIGITAL INDONESIAを設立しました。ゆくゆくはシンガポール法人が東南アジアのヘッドクオーターとなる構想でした。インドネシア法人では15人ほど現地人を採用し、事業がいよいよ動き始めました。

インドネシアオフィスでの様子

キュービックはデジタルマーケティングの会社です。SEOを得意分野とする私たちは、現地向けの車やバイク関連のメディアを立ち上げました。渋滞がひどく、生活に車やバイクが必須であるインドネシアでは、この分野にニーズがあると感じたからです。僕がメディアの趣旨や記事の方針などを考え、英語で現地で採用したメンバーに伝え、彼らが記事を書く、といった流れで制作しました。

しかし、日本とは異なる課題がさまざまな課題が次々と立ちはだかりました。もちろん立ち上げたメディアの言語はインドネシア語。当たり前ですが、記事の質のチェックなど細かい部分は僕自身はできません。記事の質の担保がかなり難しかったのです。

100万回再生突破も広告費はたったの…

当時の回線速度向上を背景に、動画制作の需要が高まると予測し、現地でクリエイターを採用して動画メディアにも着手しました。YouTubeのチャンネルでは15万人の登録者を獲得し、銀の盾も受賞。動画の再生回数は100万回を超えるものがたくさん制作できました。

少し軌道に乗ってきたかなとほくほくした気持ちで、広告費の振り込みを確認すると、そこには”300ドル”の表記が…

これには目を疑いました。あれだけ再生されて…たったの300ドル。日本円で3万円ちょっとです。

インドネシアを含む東南アジアの地域は人口も多く、見ている方も何度も繰り返し”ながら見”をする習慣があるので、再生回数が伸びやすい分、広告単価が日本などと比べてかなり低い傾向にあったのです。

これではマネタイズできない…。メディアの広告収益やタイアップだけでは事業を安定させるには至らず、危機感を覚えた私は日本向けの動画制作案件を請け負いました。

オフィスランチではみんなでカレーを。

動画制作費を安く抑えられるのが、現地法人の魅力。片っ端から日本の制作会社に問い合わせをして、その動画制作の売り上げで”食いつないでいた”という表現が当時の状況とピッタリ合いますね…。

ただこれも質の担保に課題があり、クライアントから日本語でフィードバックが返ってくるものを僕が訳して、現地のメンバーに伝えるのですが、どこが修正ポイントなのか彼らはわからないんです。細かいニュアンスのコミュニケーションに非常に苦労しました。最初はこの程度のクオリティでは日本では通用しない、というものが上がってきて、私もレベルの底上げには骨を折りました。実は、このクオリティの問題は現地人の生活と密接に繋がっているんです。

「ボス、雨宿りしてるから遅刻する」「ボス、お腹痛くて今トイレいるわ」文化的背景が生むビジネスの壁

インドネシアでのビジネスには、文化的背景も大きな影響を与えます。

国民の約9割がイスラム教徒であり、1日に5回のお祈りや、1年に1度のラマダン(断食月)が仕事のスケジュールに直結します。例えば金曜午後の長い礼拝や、断食期間中の昼間の活動低下など、これらを尊重しつつ業務を進める必要があります。

カトリック教徒も1割ほどいますが、カトリックの場合は日曜のミサに出ることはあっても平日仕事を中断してのお祈りはないので、個人のパフォーマンスという面でもカトリック教徒のほうが上がる傾向があります。

いつもより業務から抜ける時間が長いこともしばしば。でもさすがにお祈りから戻ってきた同僚に「今日、お祈り長くない?」とは言えません。

さらに、雨季には通勤がバイクで困難になることや、衛生環境の違いから体調不良で出勤できないスタッフが頻発するなど、日本では考えにくい問題にも直面しました。

代表・世一がインドネシアオフィスに訪問する様子

「ボス、雨宿りしてるから遅刻する」「ボス、お腹痛くて今トイレいるわ」これは日常茶飯事です。そんななかでもパフォーマンスのコントロールはインドネシア法人の代表として必要不可欠な仕事でした。

結局、瞬間風速的に単月での黒字はあったものの勝ち続ける状況を維持できず、トータルでは赤字を5000万ほど作って世一と話し「いったん閉じよっか」と2020年の半ばに決断をしました。要因として考えられるのは、人を抱えすぎて人件費が嵩んでしまったこと、そしてマーケットFITができなかったことだと考えています。

僕らが得意とする広告領域において、日本は一定成熟したマーケットをもっています。利益を見込めれば、販促時に企業は潤沢にプロモーションにお金をかけることができます。しかし、インドネシアは途上国です。1人のユーザーから見込まれる利益も少ないため、成果報酬の基準も低く、その分10倍、20倍のユーザーにプロモーションをかける、いわゆる数の勝負となります。そんなインドネシアの広告市場の攻略方法が僕の力不足で見いだせませんでした。キュービックの勝ち筋である、たった1人のペルソナの強烈なインサイトを見つけて刺しに行くというスタイルが市場とは合致せず、n=1のインパクトが想定よりも薄かったのです。

うちの代表はいい意味で(強調)頭がおかしいです

今、インドネシアでの出来事を振り返って思うのは、”何かしらやれば生きていけるな、コケても、ちょっとやそっとじゃ死なない”ということです。

これから日本で何か新しいチャレンジするとしても、すでに協力してくれる仲間が周りにいます。誰も知り合いのいない異国の地で、たったひとりで右も左もわからないなか進んでいた当時と比べれば、ずっとやりやすいです。何かトラブルが起きたとしても、一緒に働くメンバーの給料が払えないかも・・となることはないんです。

24歳の自分をぽんっと数年海外に送り出してくれた世一には感謝しかないですね。

結局赤字を作って帰ってきちゃいましたけど、今考えれば右も左もわからない若者の熱意に数千万投資してくれたってことです。忖度なしに経営者として異次元の存在だなと思ってます。また当時のメンバーが稼いだお金を使って僕は新規事業を作りに行っていたので、快く送り出してくれたことへの感謝と、成果を残せなくてごめんという歯痒い想いとが、今も入り混じっています。

もちろん、当時よりも会社はずっと成長して規模も大きくなって(ガバナンスもしっかりして)いますので、当時とまったく同じことができるかといったらそうではないでしょう。

ただ、20代前半から30代で特に失うものって特にないので (私が断言します)、熱い意思があるならば臆せず周りに伝えてみてください。応援してくれる会社です。目先の損得よりも、中長期的な会社の価値につながることに投資したいと考えてくれる会社なので、少しでも気になったら、扉を叩いてみてください。挑戦するための条件が揃うまで待っていたら一生その機会は来ないので、まずは挑戦環境に身を置いてみるのがいいですよ。

僕の失敗話がみなさんの背中を少しでも押せていたら嬉しいです。

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